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[IP Daily 新聞寄稿文] 弁理士の特許侵害訴訟代理人の資格

弁理士の特許侵害訴訟代理人の資格

(2022年5月17 IP Daily 新聞寄稿文)

大韓弁理士会元会長 金明信

 

2006年と2009年、国会の産業通商委員会で、弁護士が特許訴訟代理人として選任されている事件において、訴訟当事者が希望すれば弁理士を追加して訴訟代理人として選任することができる弁理士法改正案が可決され、2022512日に再び国会の産業・通商・資源・中小ベンチャー企業委員会を通過した。しかし、この弁理士法改正案は16年前からも国会の該常任委員会を通過したが、これら法案はその都度、法司委員会において審議さえ行われず、会期満了で廃棄されてきた。そのため、法司委員会はいつも弁護士の職域だけを守っているという非難を浴びてきた。最近、国会主管の公聴会にて弁護士出身の議員までも弁護士と弁理士が一緒に特許訴訟を代理することを許容しなければならないという意見を披歴した。

 

特許侵害訴訟の本質は特許権侵害の立証にあり、この立証は特許技術明細書における特許請求の範囲を解釈して特許権の範囲を確認した後、訴訟対象の侵害技術が特許権の範囲に含まれるか否かを判断しなければならない。したがって特許侵害訴訟において弁理士が作成した書類を、技術を知らない弁護士が法廷に提出だけをしている実情を打破する一方、特許訴訟経験のある絶対多数の事件当事者は弁理士が直接法廷に技術関連書類を提出して陳述しなければ早期に実体的真実を発見することができなくなると訴えている。

 

弁護士会では、弁理士に特許侵害訴訟の代理を許容すれば訴訟を円満に代理することはできないと主張している。しかし、1998年から民事訴訟法を弁理士試験の主観科目として採択しており、それ以降、弁理士は毎年民事訴訟実務研修も受けているだけではなく、特許裁判所への特許、デザイン、商標登録の無効及び権利範囲の確認審決に対する取消訴訟を1998年から行っているため、これもまた杞憂に過ぎない。さらに弁護士の他に弁理士を追加して訴訟代理人として選任すれば、訴訟費用が増加するという理由でも反対している。しかし、これまで特許侵害訴訟は事実上、中·大型の法律事務所で独占していたため手数料が高かったが、特許出願を扱った弁理士と協力できる弁護士と一緒に訴訟を提起すれば、かえって訴訟費用を抑えることができ、また特許訴訟当事者たちは費用も重要であるが、迅速・正確な判断を受けることに深い関心を持っているのが実状である。

 

特許技術を知らない弁護士は裁判の前に弁理士から関連技術について説明を聞いても該技術をよく理解できないため、裁判途中に傍聴席の弁理士からメモを受けて適当に陳述するなどの寸劇は消えなければならない。

 

弁護士は、弁理士制度が樹立された初期から今まで弁理士資格を自動的に取得するため技術を知らなくても特許出願を代理することができるにも拘わらず、弁理士との共同訴訟代理を死生決断で阻止することは弁護士法に明示された社会正義に逆行するだけでなく、公正でもなく非合理的である。

 

スイス国際経営開発研究所が発表した2021年知的財産に関する世界競争力年鑑によると、韓国の国家競争力は64ヶ国中23位であり、政府の効率性は34位であった。

 

天然資源のない韓国が第4次産業革命時代を迎え、国家生存戦略として知的財産政策を重要政策として採択した以上、米国、EU、日本、中国と同様に弁理士に特許侵害訴訟の代理人資格を付与しなければならない。尊敬される社会指導者としての弁護士たちが国民から継続して尊敬されるには、正義、常識、公正な仕事をしなければならないところ、果たしてそうなのか国民が注視している。