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[法律新聞寄稿文] 国民創案政策実名制

国民創案政策実名制

(法律新聞2023115)

                                          弁理士 金 明 信

                                                                前 大韓弁理士会 会長

 

米・中葛藤とともにロシアの戦争挑発によって展開されている微妙な国際情勢は、今世界を大混乱に陥れ、毎日大小さまざまな社会的イシューを生み出している。特に、地球温暖化による環境問題と食糧問題など深刻な経済波動問題や日本の福島処理水問題はすでに世界的なイシューとして浮上しており、我々にとっても放射性廃棄物の貯蔵場所を含めてエネルギー供給、国民年金、人口、教育、労働問題など、多岐にわたる重大な国策課題が山積している。

 

我が国の司法年鑑の統計によると、民事・刑事・家事などの2022年の訴訟新受件数は6167312件であり、国民8人あたり1件の割合で裁判所に訴訟を提起しているということになる。日本では2022年の訴訟新受件数は3375121件であり、国民37人あたり1件の割合で訴訟を提起していることに対して我が国の訴訟件数は日本の約5倍にもなる。このような傾向が続けば、訴訟天国と言われるアメリカに似ていくのではないかと心配である。また、国民権益委員会の集計によると、昨年に受理された民願の総数は1,238万余りにもなり、これは国民5人あたり1人が政府部処に民願を提起したことになる。この程度の民願が提起されれば、全国のすべての公務員が正常な業務を遂行することはできなかったと見なければならない。

 

数年前、ユニセフ韓国委員会の副会長の資格としてヒマラヤにある隠れた王国といわれる人口75万人のブータンに筆者の寄付金で小さな学校を建設する起工式に参加したことがあったが、ブータンは国民所得は低いが、社会的な葛藤が少なく、世界で最も幸福指数が最高の国であることが実感できた。国民所得が増え、資本主義が発達するにつれて、人権と権利の主張が日増しに強くなる現象は避けられない。このような急増する国民の葛藤を緩和する方法について筆者が以前から考えていた「国民創案政策実名制」を提案したいと思う。

 

現在も「民願処理に関する法律」があるが、その審査と実行に関する執行権は政府が独占しており、その恵みも微々たるものであるから、該法律では画期的な効果を期待することができない。要するに、国家の主要政策は客観的に十分な議論なしで臨機応変で定められてはならいため、大統領・大臣や国会議員が政策を立案して決定した後、上意下達式に実施される今までの国家政策運営制度を画期的に転換して、今後は国民が提案した優れた政策に対して合理的な審査機構の構成とともに公正な審査を経て採択してその政策提案者である国民の名前をその政策名に併記し、オリンピックで金メダルを取れば一定額の年金を支給するかように、採択された政策提案者に一定の報償金を支給する制度を設けたいということである。65歳以上の高齢人口が国民の18%を占める現時点で、高度な専門職に従事した後退職した高齢者を含め高学歴の専業主婦、若年失業者、会社員、軍人など全国民を対象に毎月500万ウォンずつ10年間報償金を支給する方法で高額の懸賞金をかけ、優れた政策を提案するように懸賞広告をすれば、画期的な良い政策が開発され得ると思われる。

 

さらに、このような「国民創案政策実名制度」は、多様な社会的葛藤をすべて民願や訴訟で解決しようとする環境を超えて、全国民が集まって素晴らしい政策を立案しようと努力し、その結果に対して政府から正当な報償を受けることになれば、国民個々人にとって大きな助けになるだけでなく、国家的にも大きな課題を解決すると同時に、各種民願や訴訟を準備する国民の関心を健全な方向に導くことで、相対的に訴訟や民願件数も減らす効果が得られることになると思われる。

 

一方、天然資源が不足である我が国の生存戦略として、全国民の知恵を集めて国際競争で生き残るために、筆者が知識財産基本法の制定運動を主導し、2011年から本法律が施行されているが、本法律をさらに補完する必要性が生じており、全国民のすべての創作資産を効率的に管理するためには、今やコントロールタワーの役割を果たすことができる「知識財産処」の設立が緊要となっている。とにかく、我が国民の賢明な知恵を集約し、第二の漢江の奇跡を必ず成し遂げて、小さいが強い国を作る契機となることを切に願う。